無謀な買い物で危機に陥り、シータで脱却できた話

移動といえば車が常識、というド田舎の(失礼!)アイダホフォールズで、車の免許を持たない私にとって最後の命綱となったのは自転車です。

ウォールマートという大型スーパーで、88ドルでちゃんとした自転車が買えるよという話を聞いたので、さっそく行ってみました。

お目当ての自転車はすぐに見つかり、即買い。
(ただ、棚に立てかけて陳列してある自転車を自分で勝手に降ろしてカラカラと引きずり、食料品とかを買う主婦が並んでる列にまじって、フツーにレジでバーコードを読んでもらって会計するのがちょっと場違い感満載で面白かったです)

で。

「そうだ、せっかくスーパーに来たんだし、当面の飲み物でも買って帰ろう」

と思ったのが運の尽き。

買ったばかりの自転車は外の駐輪場に停めて店内へ戻り、気がつけば2リットルの紙パックのジュースを5つ、4リットルの巨大ペットボトルのジュース(←日本だと、焼酎でよくあるでっかいやつ)を3つ、カートに入れて会計してしまいました。

レジの店員さんは、紙パックの飲料だけをレジ袋3つに小分けして入れ、ペットボトルのほうはハナから諦めたのか、それとも私が当然、車で来ているから大丈夫だろうという算段なのか、裸のままボンと会計済み商品用の台に置きやがりました。

「まさかのレジ袋なし!?」

一瞬、レジ袋をもっとくれるよう要求しようかと思いましたが、

「いや、でもレジ袋はなるべくもらわないほうが……」

というよくわからない主婦的な節約根性と、英語で自分の要求を主張することへの気弱なためらいのため、あろうことかシレッとした顔で、

「ああいいの、どうせ駐車場に出たらこういうのはすぐ後部座席にでも積んじゃうから」

という顔をして(←どんな見栄だよ)外に出ました。

そこには、どう考えても合計約25kg相当の飲料を運搬するには適さない、新品の自転車がありました。

3つしかないレジ袋(日本のより薄くて強度もかなり脆弱です)に、どうにか巨大ペットボトルをねじ込み、持ち手の部分をハンドルに吊るし、それでも入りきらないペットボトル1本だけは小指でひっかけて持ちながら自転車のハンドル操作をするという、まるで1人拷問ごっこのような姿勢でおそるおそる自転車をスタート。

走り出して5分もしないうちに、段差を車輪が通ったときの衝撃で3つあったレジ袋のうち2つの袋の紐がブチン!と切れました。

「終了ーーーーーーーーーー」

頭のなかで誰かがそう言った気がしました。

なまじっか5分も自転車で走ってしまったので、いまからこんだけの重さを抱えて店まで歩いて返品しにいくという選択肢もまったく現実的でなく。
ていうかもしそうするとしたら自転車はどうなるんだよ、という。

「だからいわんこっちゃない……」

と泣き出したい気持ちに負けそうになりましたが、

「お前、シータサイエンスにまでなるって言ってアメリカまで来ておいて、たかだか30kg弱の飲料の運搬ごときでくじけるなよ!そんなんで末期がんが治せっかよ!!」

といういつもの根性論(←最終的にはそこ)で自分を奮い立たせ、

「ぜったいにどうにかなる!!!!!!!!!!」

と強くコマンドしました。

すると、コマンドして3秒もしないうちに、ちょうど信号待ちで道路に止まっていた車の助手席の窓が開いて、

「Do you need an extra bag?」

といって黒人の人が、スーパーのレジ袋を差し出してくれました。きっと、私が道路の端でオタオタしてたのを、信号待ちの最中にずっと見ていたのでしょう。

Thank you!といって受け取ったレジ袋は、自分が買ったウォールマートのものよりサイズが大きく、生地(っていうのか?)も分厚い感じでした。助手席のお兄さんありがとう。あなたは天使です。

私がレジ袋を受け取るとすぐ、信号が変わってその車はすごいスピードで走り去っていきました。

それでも、新しくもらったレジ袋と、既存の紐が切れていないレジ袋。自分にはもう、2つしか袋が残されていません。

自分が住むコンドミニアムまでは、まだ自転車で10分はありました。

そこで、

・レジ袋の強度アップ(分子の結合力増大)
・重力の法則に働きかけ、このレジ袋(と内容物)にかかる重力を軽くする

という2つをコマンド。

新しくもらったレジ袋に飲料を詰め込み、それだけで生地が伸びて薄くなって破れる一歩寸前、というところまでもっていきました。
既存のレジ袋は、紐が切れないよう入念に分子の結合力を強くしました。

それらのレジ袋を今度もハンドルの左右に1つずつ吊るして、あらためて自転車スタート。

すごい勢いで伸びていくレジ袋の紐を見るだけでも心臓に悪いのに、本来は3つの袋に入っていた(それでも入りきらなかった)ものを2つにしたことでバランスがとりにくくなり、また足や車輪に袋の内容物がボンボコ当たって何度も車に轢かれそうになりながら、それでも徐々に慣れて、自分のコンドに着く頃には

「まだまだどこまでも走ってやるぜ!」

と図に乗って鼻歌が出るまでに(←懲りてない)。

無事にコンドに到着したときの達成感は、銀行のシステム部に勤務して数年がかりの大規模な世界同時決済システムでプロジェクトリーダーを担当して無事に開発終了まで持っていったときのより数千倍は大きかった気がします。

記念に、このとき活躍してくれたレジ袋の画像を載せます。

hukuro2.jpg
最初から最後までがんばってくれた、
ウォールマートの薄い生地のレジ袋。

hukuro1.jpg
車の助手席から黒人のお兄さんが
手渡してくれた頑丈なレジ袋。

この日記の内容がたいしたことないと思う人は、実際にやってみて下さい。

「やってみたぜ!そしてできた!!案の定、たいしたことなかったな!!!」

という人がいたら、ものすごく興味なさそうに「あ、そうですか」と目線を合わせず言おうと思います。
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