百歳の力

読みました。



帯にあるとおり、

103歳の現役美術家 唯一の自伝

です。

ただ、新書だからというかなのか、唯一の自伝というわりには、「さらっ♪」と代筆で「しのいだ、こなした、片付けた」的な仕上がりになってしまっているぽいのが非常に残念。
(そもそもタイトルからして、編集者が『キャッチーで売れるタイトルつけなきゃなー』とさんざん悩んで『これだ!』と渾身の覚悟を込めて思いついたのであろうことは想像がつくのですが、べつに『百歳の力』というものについて詳細に述べてあるわけでもなく、かえって著者の自伝という体裁に泥を塗るというか、はたしてプラスに働くタイトルだったのかなぁという疑問もあります←ただし著者がどこまでどの業界で有名かそうでないか私は正確な数字は知りませんが、やはり世間一般からすると無名というか、『へぇ、そんな人いたの』レベルの知名度だと思うので、このタイトルで『えっ!? 百歳超えてまだ生きてるの!?』という点に希求したほうが、たしかに売上は伸びるだろうなぁという感慨もあるのですが)

それでも。

長生きの秘訣は、しがらみや常識の枠に縛られずに好きなことをしていたから。他の人が思い悩むようなことを悩まなかったから……的な点は、(実際に100歳を超えて生き延びていられるというなによりの説得力もコミで)一理あるなと感じます。
美術家として、しかも定型のないジャンルの創作を手がけることで、やはり型にはめられていないことが長生きにつながっているのではとほのめかす箇所も。

万人にとって絶対の真実、というわけではないことは著者も強調していますが、(なにが自分にとって不要かを見極めて)不要な悩みで体や心を消耗させないのは、たしかに長生きの秘訣かも。

ああでなければならない、こうでなければ、とうるさく言う?タイプの人は早々に死んでいったというのも、静かに説得力おおきいです。

クソリプ「はぁ?長生きのほうが良いって誰が言った?ていうか人生は学ぶためにあるわけで、はやく魂の学びを終えた人から死んでいけるんだよ?長々と生きてるってことは、学べてない劣等生!居残り組ってことなんだよ?www こうでなければならないと強い信念を抱いて早死にしたなんて立派じゃん!しかるべく枠にとらわれて苦しむこともしないでのうのうとしてるから、人生の課題が終わらず、寿命のお迎えが来ないんじゃんw 恥だよ、恥」



個人的には、長生きしたということなんかある意味どうでもいいから

独身を貫いている女流芸術家(として生きている)

という点のほうが、グッときました。
(ファミレスでこの本を読んでてボロボロ泣いてしまったんですが、それがまさに、著者の結婚観というか、独身の女で芸術家として生きるということについて述べてる箇所でした)

しかも今、結婚適齢期とされる年代なわけではなくて、戦前・戦時中・戦後の、女は女学校時代に婚約して学校を中退してお嫁に行く(&その家で一生、お姑さんの下でタダ働きする)のが当たり前とされていた時代を、独身を通して自活してきたという点がすごい。

(それにしても戦前頃の、女にとっての結婚って酷かったみたい。特に戦時中などは、せっかく嫁いだ先で夫に召集がかかり、ほとんど付き合いもないまま戦死され、かといってすぐ別れると村八分の勢いで周囲から悪く言われるからそのあとも何年も十何年でも姑にひたすら奴隷のように仕え続けるのが女の宿命だったとか←要は、まだ20代前半という若さと可能性を、たまたま姑ということになった赤の他人の下で奴隷生活を送るという形でポシャらせられてしまうわけですね)

著者の生きた時代に比べたら、女が独身で働いて自活することに対する世間の理解や「やりやすさ」は、計り知れないはず。
いったい何を戸惑うことがあろうか、罪悪感のような後ろめたさを抱くことがあろうか!……と、すごく励まされる思いがしました。

私は今後どれだけ生きようとも、

「結婚しないの?かわいそうに。幸せになることができていないんだな。子供もいない?それは社会人として重要な務めを果たせていない、あるまじき在り方だ。家庭を築き子孫を残すのは人間の義務なのに、それをほったらかして芸術?スピリチュアル?……どこまで頭がイカれてんだかw お前みたいな人間の生きてる価値って何? ていうか生きてるべきじゃないんじゃないの?お前みたいな役立たずのゴミは早く死んだほうが、世のため人のためw」

みたいな世間の声(←直接聞こえてるかというとそこまででもないんですがw)なんて気にせず、女として、独身をべつに過度に誇るでも引け目に感じるでもなく、納得いくように自活して生きていこうという決意を新たにしました。

あと、

「芸術なんて、スピリチュアルなんて、実社会では何の役にも立たないじゃないか(せいぜい、お金と時間と気持ちに余裕ある人や判断力の乏しいバカが金をドブに捨てるみたいに落とすことでどうにかはびこってしまっている無用の長物もしくは社会的害悪、反社会的危険因子)」

という考え方って、あるわけですよね。

スピリチュアルについては述べられていませんが、芸術というものがどう……役に立つ、と書くと語弊があるんだろうけど……「人や社会と関わり、それらを活性化する?変える?力を持っているものなのか。実際そういう役目を果たしてきているか。この世界の欠かせない1つのパーツとして、分野として実在してきているか」について、すごく控えめに婉曲的にですが語られます。

「だよなぁ」
「それな」
「ホンマそれ」

的な相槌。

もし唯物論的にビジネスライクな考え方で

女は結婚して子供を産んでナンボ。芸術なんて存在する価値すらない

という考え方に立つとすれば、この本の著者なんて、生きてる価値どころか、生まれた価値すらない、ということになってしまいますよね。

あえてそういう極端かもしれない考え方を視野に入れたうえで、この著者のように、女が独身で、芸術家として生きるというのはどういうことなのかを考えると、私個人としては、自然と「そうじゃない。べつに女の価値は結婚や出産だけじゃない。芸術という分野で活動をすることが、いわゆる他のわかりやすく金儲けなり社会的インフラ整備に貢献するといった職種の仕事をしている人と比べて遜色あるものではない」ということのほうが浮き彫りになってくる心地がします。

それでいて、戦後すぐの貧しい頃に、グランドピアノが5円(←要は、安いという意味なんでしょう)で売られていても誰も買わず、物を乗せて運ぶ手押し車のほうが高くて需要があったという記述も、感慨深い(←という生易しい感慨では実際はないのですが)。

いまにも餓死寸前でお先真っ暗、というときに悠長に芸術、なんてものがあってもそういう局面では芸術なんて力を持ち得ないよなぁ、ということも、(体験を通じてわかった、とは口が裂けても言えませんが)ぼんやりとですが想像することはできているつもりですし。

芸術家の社会的意義・存在価値ってなんだろう、という、ありきたりかもしれないけど普遍的なテーマについて考え直すきっかけにもなりました。
(私の場合は芸術という単語をスピリチュアルに置き換えて考えるほうが、自分の身に直結するわけですが)



同じ著者による、こちらの本もあります。



P.S

さらに桁違いの長寿・女流芸術家の本として、こちらもあります。



73歳から画家デビュー、100歳超えてニューヨークへ

って……。

ど〜ん〜だ〜け〜♪w

芸術は芸術でもピアニストのほうに視点を移すと、こんな方が。



ハワイ名物「てしま食堂」の看板娘は104歳、の触れ込みでこんな方も。
 ↓


世界一忙しい現役100歳フォトジャーナリスト、の触れ込みでこんな方も。
 ↓


高齢者本(こうれいしゃぼん)、ってジャンル、今後ますます確立されていきそうですね。

さぁ!若い時才能がないとかチャンスをつかめなかったとかでホゾを噛んでるみんな〜♪
敗者復活戦は、長寿だよ!100歳超えて、それを売りにして本でもなんでも出そうよ🎶

つぅか……。

100歳近く(or以上)まで生きてられる境遇のマニフェストができてるって時点で、どんだけ強者なの

って話ですがw
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