稼ぐ力

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稼ぐ力: 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方稼ぐ力: 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方
(2013/09/05)
大前 研一

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タイトルにもなっている稼ぐ力とはなんじゃらほい?(←まさかの死語)という内容については、P105から3つのフェーズとして述べられます。この本のキモだけ読みたいなら、そこだけ読めば、って感じ。

で、その前後は何かというと、上記の「キモ」部分へ説得力を持たせるための前提概説と、キモ部分がどうして大事なのか、今後の日本のビジネス界へどう適用していきうるのか、その結果我々はどこを目指すべきなのかの提言になってる感じ。

うーん、まさにコンサル的。
(いわゆる玉石混交のビジネス書において、玉の極みとはこれだなぁ、と、どこかホッとする心地です。書いてある内容が全部、唯一の真実ではない(≒一個人の提言に過ぎない)にせよ、著者個人の意見と対立する見解の読者がいうるにせよ、『一理ある』『これだけ世の中をこういう視点でこう見てる人間が、日本に最低でも1人いるのは安心だ』的な感慨は、あるんじゃないでしょうか)



もう少し、私なりに本の内容を概略で説明すると、

・本来、今これからの時代でデキるビジネスマンというのは、こういうことができる人材のことだ

ということがおそらく一番に言いたい感じ。(それが『3つのフェーズ』のくだり)

そして

・日本企業の多くがそういう人材を育成・輩出・活用しえない、良くない制度で動いてる

というダメ出しポイント(≒改善すべき点)を、現状の日本のビジネス界に対してコンサル的に指摘してる。
(どこがどうよくないのか、それが現実に起きてしまっているのはどんな要因ゆえか、そこに対してどんな改善・打開策が講じられうるか、などをいちいち細かく掘り下げて書いてる感じ)

一言でいうと、グローバルに通用するビジネスマンを育成&輩出するという観点から見たらヤバいよ、という、日本のビジネス界に対する警鐘、ってことになるんでしょうか。

「元気をもらおう」というような、自己啓発本のニュアンスで手にとってしまうと、痛い目を見るかも。



この本を読んだ私の感想としては、

所属している会社の特性(凄さ/ショボさ、業種の違い、社風etc)に関係なく共通して、労働者がビジネス面での能力を伸ばすうえでの指針となって助かる(だろうな)

というのが一番大きいです。

というのも、会社員でも個人事業主でも、ある程度ルーチンとしての業務が回ってしまう&それをこなせてしまうと、そこから先、どんな能力をどう伸ばせばいいのか、伸ばしうるのかの選択肢や可能性自体が、漠然として見えないという事態に陥りがちだと思うんですね。

いつしか中堅社員(忠犬社員?)と呼ばれる頃まで迂闊にぼんやり勤めてしまうともう、その会社のなかでの出世のすごろくのマスしか見えなくなる(○歳頃にうまくやれば○長に昇進、とか)。
個人事業主となると会社みたいな出世もないから、それこそ日々の業務を延々と繰り返すだけで「食えてるだけでありがたい、余計な欲は出さずお客さんに感謝して期待に応えてこそ」みたいな、一見、非の打ち所がない(けど人をそれ以上に成長させうるか怪しい)信念に沿ってループするだけの年月を繰り返す……。

これだと、そもそもビジネスマンというものが、どこまで伸びうるものなのか、そしてその伸びた各段階ではどういうことができるようになっている(べき)ものなのかという全体像を見ることがなくなってしまう。
(ただ、実質的に、そんなもの見たくもないし、見たところでその全体像とやらの能力が高い側には行けないし行く気もないよ、という人が大多数の気もしますがw)

で、この本で著者が指摘しているように、日本企業というのは、(それが世間では一流企業と呼ばれるような大手であっても)最初の20年間がまるっと下積み、というような、人材育成という観点から見たら非効率(というか絶望的)な制度であいかわらず動いているところが多い。

日本の大多数のサラリーマンがそんなんじゃ、これからのグローバル時代に通用するビジネスマンは育たないぜ?という論旨か知ら。

ただ、この本を読んで「そうか、どうにかしなければ!」と思ってどうにかできるのは、それこそ大きな会社の社長さんだけじゃないの?とも。経営者が自社の制度を刷新するうえで参考になる本だとは思うけれど、これを一般の従業員がどう参考にしろと?

だから、もし若手とか中堅とされる段階&年代のサラリーマンがこれを読んだとしたら、自分が勤めてる会社の制度や昇進スピードとは別に、

「どうすればこの本に書いてあるみたいに、○歳までに〜〜ができるビジネスマンになっていけるだろう?」

と、転職も視野に入れたうえで自発的に考える契機とするしかないんじゃないかなあ。
(ただ、『なんだかんだいって会社組織に対して“馴染み”が生まれた人間が、能力とはほとんど関係なく村社会的に認められて昇進していく』というのがほとんどの日本企業において、そして日本人のメンタリティーから言って、この本に書いてあるような正論ぶっちぎりのキャリアアップをシコシコと(どれだけ会社に勤めているとき、その会社に馴染んだりしようという努力や上司同僚との社交、人たらしに努めていようとも)心のどこかで個人主義ふうに自分の成功を夢見ているというのは、どこかで周りから『違う』と思われて、結局は虻蜂取らずに終わってしまいそうでヒヤヒヤするなぁ。なんだかんだいって大多数の人は、自分を置いてけぼりにして勝手に1人だけ成功への階段を昇っていこうとする人間を見ると、全力でその足を引っ張ったり攻撃したりする性(さが)を持ってるものぽいし)



そんなこんなで、この本に書いてあることって案外、会社員よりも自営業者のほうが実践しやすいかも、と思った。

自営業者なら自分の裁量で、この本に書いてあるような高い理想なりを、やりようによっては実現していけちゃうもんね。
会社と違って、邪魔する者が誰もいないので。

(ただ皮肉なことに?、ほとんどの自営業者はビジネスマンとしての能力を高めようなんて考えず、『俺はただ、〜さえできりゃあそれでいいのよ』という職人気質なんだろうなぁ)



嗚呼、ここまで来て思った。

この本に書いてあることって、必ずしも絵に描いた餅ともいえず実践的なことだし、現実のビジネスで参考書として活かそうと思えば活かしうる可能性そのものはすごくアリアリな良書だけど、

この本に書いてあることを参考にして、そっくりそのまま実行に移そう&実現しようなんて人間は、まずこの日本にはいない

だろうなぁ、と。

そんなこんなで、実際にそこにあるけど食えない餅、ってことか。飾っておく分には見栄えがするだろうけど的な。

あ!

この本って、

鏡餅


だったんだ……。

(あっれー、おかしいな。記事を書き始めたときは、こんな後ろ向きな結論で終わるつもりなかったのに)
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